現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 多能工とは?メリットや失敗しないためのポイントを詳しく解説!

多能工のメリット/デメリットを解説!失敗しない導入のポイントは?
多能工とは一人で複数の業務を行うことを指します。労働人口が減り、採用難の課題がある中、多能工を導入することで、業務平準化/人材配置の流動化などを通じた生産性向上を実現することも可能です。

本記事では多能工の意味やメリット/デメリット、製造業で多能工化に失敗しないための流れやポイント、実際に多能工化に成功した企業事例について解説していきます。

現場改善ラボでは様々な工場のコストダウンを支援してきた石山 真実氏による「限られた人員で生産性向上/品質向上を実現する多能工化教育の進め方」について解説した動画を無料で視聴できます。ぜひ、本記事と併せてご覧ください。


省人化による生産性_品質低下を改善する『多能工化の進め方』

多能工の概要

多能工の意味と単能工との違い

多能工とは「たのうこう」と読み、一人で複数の業務を行うこと/異なる2つの技能を持つ技術者のことを指し「マルチタスク」とも表現されます。主に製造業の現場で、負荷分散に効果がある手法としてなじみの深い言葉です。このような技術者を組織に増やすために、教育や設備投資を行うことを多能工化と言います。

多能工は、トヨタ自動車が生産性向上のために取り入れたと言われ、社会的な認知度が上がりました。生産性向上を実現したトヨタ生産方式(TPS)で、ムダの徹底的な排除を下支えしていたのが多能工です。


多能工の反対の意味として、単能工といった言葉もあります。単能工とは一人1つの工程・ラインを担い、専門的に業務を行う技術者を指します。単能工は特定業務のスペシャリストでもありますが、大量生産から変種変量生産にシフトしつつある製造現場では、多能工化することで生産性効率の改善にもつながります。

多能工における2つの定義

2つ以上の専門技術を持っていれば多能工とされていますが、実際の定義は主に2つに分けられます。

たとえば、製造業系メーカーで金属加工に精通した技術者が電気設計を習得したとします。電気設計は電気回路の設計がメイン業務で、加工知識は必要としません。同じように金属加工でも電気設計の知識は必要ありません。

このように、2つの技術に関係性が乏しい場合、既知の技術を活かす事は難しいでしょう。この多能工化は、業務工程やスケジュールの調整に適した負荷分散型の多能工と言えるでしょう

一方で、この技術者が機械設計を習得した場合は、スキルに共通性やシナジーが生まれ、その知識を存分に活かせます。機械設計では部品図を作成し、その図をもとに技術者は加工を行います。この2つのスキルを持つ技術者であれば機械設計を行う時点で加工のしやすい部品図を作成できます。

このように、作業工程を深く理解して効率的に再構築し、2つの作業を同時に処理できる多能工はマルチタスク型と言えます

マルチタスク型の場合、複雑な加工工程を早期に予見し工数削減につなげる、あるいは大量生産のしやすい部品図を作成しコストカットするメリットがあります。

多能工が注目を集める背景

多能工が注目を集める背景には、日本の社会問題があります。2023年現在の日本では少子高齢化が進み、世界でも類を見ない超高齢化社会に突入しつつあります。そのため労働人口も減少の一途を辿っており、さまざまな業界で人手不足の課題が顕在化しています。

経済産業省の「2022年版中小企業白書・小規模企業白書概要」によると、各業界の中小企業/小規模事業者で人手不足の状況が続いています。2020年~2021年付近は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、一時的に人手不足の状況が弱まりましたが、徐々にコロナ以前の水準に戻りつつある様子が伺えます。

【引用:経済産業省「2022年版中小企業白書・小規模企業白書概要」】

この少子高齢化は日本の人口が減少する問題だけでなく、ベテラン技術者が培ってきた技術を継承する手段が限られる問題も生まれます。

そのため、複数の技術者がそれぞれ培ってきた技術を少数の技術者に継承する難易度が高い事態になっています。これは外国人労働者を雇い入れても語学力の問題により技術継承は困難でしょう。ここから、日本企業の多くで生産性向上を叶えるべく、多能工化が重要課題の一つと見なされるようになったといえます。

しかし多能工化が重要とは認識しつつも、さまざまな課題によって進まない実情があります。詳細は後述の「多能工の導入課題」で解説しますが、多能工化に取り組む時間の確保や、取り組みを推進できる人材の欠如や処遇改善が困難など、多くの課題があることも事実です。

一方で、そのような状況の中でも多能工を進めた企業では一定の効果が出ています。中小企業庁の「2018年版中小企業白書」によると、従業員の能力向上や負荷軽減、コミュニケーション活性化などといった効果が得られています。

▼多能工化・兼任化によって得られた効果▼

【引用:「2018年版中小企業白書」】

多能工のメリット

多能工化には主に、生産性向上のメリットがあります。どのようにして生産性が向上するのか詳しい内容を解説します。

業務の平準化

作業工程が前後に分かれている場合、両方をこなせる多能工技術者がいればスケジュール管理の面では1人で2つの作業ができます。これはプロジェクトの進行中に空き時間が生まれないので生産性が向上するメリットがあります。

人材配置の流動化

専門度の高い作業工程で人手が不足した場合、多能工技術者をその作業に割り当てます。そうすることで、人手が不足している作業工程を補えるのです。

組織力の向上

多能工技術者は部署の垣根を超えて仕事ができるため、部署間のコミュニケーション不全による失敗を未然に防ぐ役割を持てます。それぞれの仕事内容を理解して、打ち合わせの誤解や引継ぎ不足によるミスを防ぐことができます。

部署間の連携が強化され、一体感の強い組織ができます。

やる気と能力を引き出す

多能工技術者は2つ以上の作業ができるため、仕事の裁量が増える傾向にあります。作業工程の要所を判断する回数が増えるので正しく判断する力は自然と高くなります。

多岐にわたる作業工程を自分がコントロールする実感が増え、仕事に対する責任と成果への影響が高くなればモチベーションアップにつながります。

作業のイノベーションが起きる

これはマルチタスク型多能工にのみ当てはまるメリットです。マルチタスク型多能工には2つの異なる作業を処理できるため、今まで別々の部署でスケジュールをズラして行っていた作業を同じタイミングでこなせるようになります。

これは工程の前後に関係がなく、多能工化した2つ以上の技術にシナジーがある場合に起こります。2つの異なる技術から新しいやり方を確立するため、今までの常識から外れた生産効率を生みます

中途半端な技術力で多能工化すると、作業の理解度が低いためマルチタスクができず、負荷分散型多能工になりやすい一面があります。

多能工化の進め方

多能工化の進め方を4ステップに分けて紹介します。

・業務量を把握する

・業務を可視化する

・マニュアルを整備と教育計画の作成と実施

・振り返り

業務量の洗い出し

始めに業務量を洗い出します。何の業務を多能工化するのか検討します。人手が足りていない業務や属人化している業務を優先的に多能工化しましょう。

多能工化を進める前に、作業員とコミュニケーションをとり準備することも重要です。

業務を可視化する

次のステップは、実際にどれくらい人手が足りていないのか、属人化している業務はどれくらいあるのか定量的に把握してください。そうすることで、負担の大きい作業が見えてきます。多能工化を取り組むべき優先順位が明確になり、取り組みやすくなります。

教育計画作成とマニュアル整備の実施

多能工化に取り組むべき作業が決まれば、教育計画作成とマニュアル整備を進めましょう。

スキルマップなどを用いて作業者の習熟度を可視化し、どの作業が習熟しているか、していないかを確認しましょう。多能工人材の習熟状況をもとに育成計画を作成し教育を行ってください。

マニュアルがあり業務標準化してあれば、スムーズに多能工化に取り組めます。

業務によっては、業務標準化されていないことも少なくありません。業務が標準化されていないことが多くある場合には、業務標準化を進めるための具体的な手法とアプローチの詳細をクレインテクノコンサルティングの門眞 博行 氏をお招きし解説しているウェビナーがあります。是非、参考にしてみてください。

脱”我流化”!作業のバラつきを防ぐ『業務標準化のカギ』

振り返り

今後の多能工化を進める上でも重要となのが、振り返りの実施です。

教育計画に対して進捗はどうであったのか、作業者は過度に負担が大きくなっていないか確認しましょう。

今後の育成や改善活動にも役立つでしょう。

製造業で多能工化に失敗しないためのポイント

常日頃から基準を作っておく

技術体系の見える化、評価基準、作業マニュアルの作成等、日頃から社内の核となる基準を作っておく事で多能工化しやすい環境作りができます。

多能工教育は新人の育成ではない

多能工はベテラン技術者が新たに技術を習得するため、単純に新人を育てることとは違います。上下関係への配慮、仕事の振り方、評価の仕方には気をつけましょう。

会社として新たな道を模索する挑戦になる。

多能工化は今までにないやり方が増えます。スケジュールの管理、部署間での多能工人材の配置、新しい作業手法の獲得等、得られるメリットは多いですが多能工技術者だけでなくそこに関わる人達も合わせて変化していかなければ会社として多能工化を推進していくことは難しいでしょう。

上司がリーダーシップを発揮し、会社全体の意識を変えていかなければ多能工のメリットは完全に引き出せません。

動画マニュアルで多能工化の推進も可能

多能工化を実現する手法としてさまざまなサービスがありますが、コスト面・納期面でみたとき有効なのが動画マニュアルの導入です。ここでは2つを解説しましょう。

  • そもそも多能工化が進まない理由
  • 動画マニュアルとは?
  • イセ食品株式会社、東急リゾーツ&ステイ株式会社の成功事例

そもそも多能工化が進まない理由

多能工化が進まない理由として3点あります。

  • 負荷が集中する場合がある
  • 多能工化までに時間がかかる
  • 教育コストが増加する

負荷が集中する場合がある

多能工技術者が極端に少ない場合や、専門度が高い技術者を多能工化した場合に負荷が集中する場合があります。これは多能工化の導入方法に問題があり、技術者を増員、専門度が高い技術者から技術継承することで負荷が集中せず多能工化が進むかもしれません。

多能工化までに時間がかかる

特殊な技能が必要な部署は、それ相応の教育が必要になることから部署として存在しています。一人前になるまでには、技術者の資質や覚える仕事の量にもよりますが1〜3年ほどかかります。この期間、ベテラン社員がOJTとして付きっきりになってしまうと、現場への負荷が大きくなります。

この負荷を軽減できるように、OJTの方法や学習方法の見直しなどを考える必要があります。製造業である日本クロージャー株式会社では、OJTで教えていた内容を動画マニュアルに落とし込んだことで、新人教育のOJTを7割減らし教育担当者の負荷を軽減しました。

参考元:日本クロージャー株式会社の取り組み事例を見てみる

教育コストが増加する

多能工技術者をOJTトレーナーにすることで、教育が終わるまで多能工技術者が所属していた部署の生産性は落ちます。

教育中にも仕事の負荷が高い時期には、トレーナーを一時的に交代したり、一旦教育をストップすることで生産性を高めることはできます。会社として柔軟な対応を心がけましょう。

動画マニュアルとは?

動画マニュアルとは、作業手順や安全指導、異常処置などを動画で視覚的に示す教材のことです。紙のマニュアルや口頭での指導に比べ、動画は直感的に理解しやすく、多言語対応も容易です。

動画マニュアルは、紙では伝わりにくい「業務の動き」を分かりやすく伝えることができるため、従業員は作業手順を迅速かつ正確に理解することができます。動画マニュアルを導入された企業からはOJTが半分になったという声や、8割動画に置き換わったという声を耳にします。

多能工化が進まない一因に、紙マニュアルやOJTによる教育に頼っているため、教育コストと教育時間がかかってしまうことが挙げられます。動画マニュアルを導入すると教育コストと教育時間を短縮させることができ、多能工化が進みやすくなります。

動画マニュアルでおすすめなのが、tebikiのサービスになります。tebikiの動画マニュアルでは、伝わりにくい”カン・コツ”を可視化し、データ蓄積することでOJTの効率化や業務標準化、技術伝承を推進させます。また、スマホで撮影するだけで誰でも簡単に動画マニュアルを作成でき、外国人スタッフには自動翻訳100カ国以上の言語に対応しています。

3分で分かるtebikiサービス資料

多能工化の成功事例

イセ食品株式会社

イセ食品は東京都千代田区に本社を置き、国内外でも事業を展開する鶏卵の販売・製造を行う企業です。

イセ食品株式会社は、研修時に外国籍の方に対し教育をしても、なかなか伝わらないことがありました。また、社員は他工場のヘルプや新しい工場の立ち上げ、異動によって新しい作業を覚えなければいけません。現場では基本的なルールは標準化されていない状況でした。

そこでtebikiの動画マニュアルを導入することで、研修の時間短縮、翻訳機能により外国籍の方の理解度向上、作業標準化され、多能工化の実現ができました。

参考元:導入3ヶ月で動画200本作成。 製造現場の作業標準化と多能工化を推進しています。

東急リゾーツ&ステイ株式会社

東急リゾーツ&ステイ株式会社は、ホテル、ゴルフ場、スキー場、別荘地など全国100を超える施設運営を手掛ける総合運営会社です。

東急リゾーツ&ステイ株式会社は、施設毎に業務のバラつきがあることでサービスレベルのバラつきがあったことが課題でした。また、生産性向上のため、多能工化教育をするにあたり、業務の標準化と可視化を行うことも課題でした。

そこでtebikiの動画マニュアルを導入することで、施設毎に異なっていた業務を標準化してバラつき解消、業務標準化され、多能工化の実現に成功しました。

参考元:従業員数2,500人超・全国100を超える施設で 業務の平準化と多能工化を推進。

まとめ

労働人口が減る中でも生産性の維持/向上を実現していくためにも、これから多能工化の流れはますます強くなっていく事でしょう。多能工は運用の仕方で、ポテンシャルを何倍にも引き出すことができます。

正しい多能工の知識を身につけることで、変化に強い組織作りをしていきましょう。

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