現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 ISO9001に品質マニュアルは必要?手順や効率化方法も解説!

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ISO9001の認証取得を目指す企業にとって、品質マニュアルが必要かどうかは重要な論点となります。2015年の改訂で明確な要求がなくなったものの、実際には多くの組織が品質マニュアルを活用し続けています。しかし、その作成や運用には多くの課題があるのも事実です。

そこで本記事では、ISO9001の審査員補で株式会社エイシン・エスティー・ラボ代表取締役の山本 諭氏の監修で、品質マニュアルの本質から効果的な構築方法を解説します。


▼監修者:株式会社エイシン・エスティー・ラボ 代表取締役 山本 諭

2004年化粧品容器の製造企業に入社。生産管理、品質管理の経験を経て、製造部門長に就く。100人の従業員をマネジメントする傍ら、独自の自動化で生産性を10倍に向上。生産管理システムの導入やISO9001の認証取得などにも積極的に取り組む。2020年(株)エイシン・エスティー・ラボを設立。ISOの認証取得支援や、財務改善、業務改善に加え、1on1による従業員のモチベーション向上支援に従事。

目次

ISO9001の品質マニュアルとは?

ではまず、ISO9001の「品質マニュアル」とはいったい何かを解説していきます。

品質マニュアルとは、組織が品質マネジメントシステム(QMS)をどのように計画、実施、維持し、改善するかを記載した重要な文書のことです。組織全体の方針や目標に基づき、プロセスの相互作用を明確にし、顧客満足を向上させるための基本的なガイドラインとなり得るものです。

ここで、品質マニュアルを理解する上で欠かせない2つのキーワード「マネジメントシステム」と「プロセス」について簡単に解説します。その前段階として『そもそもISO9001とは何?』という方は、以下の記事をクリックしてご覧ください。

マネジメントシステムとは

マネジメントシステムとは、マネジメント(管理)+システム(体制)ですから、「管理体制」ということになります。マネジメントシステムを築くための具体的な施策としては、以下の5つになります。

  • ① 責任者を明確にする
  • ② 仕事の役割分担を明確にする
  • ③ どのように仕事をするかを明確にする(標準化・手順化)
  • ④ 業務の中でのミスやエラーを発見する
  • ⑤  ミスやエラーを減らすための改善を行う

プロセスとは

一方プロセスとは、業務や工程、あるいはその集合体のことで、その前後には必ずインプットとアウトプットが存在します。

例)材料(インプット)→加工(プロセス)→製品(アウトプット)

また、大きな意味で会社全体の業務(各業務の集合体)をプロセスと考えると、以下のようにも捉えられます。

顧客要求(インプット)→受注から出荷までの流れ(プロセス)→顧客満足(アウトプット)

QC工程表や品質保証体系図などは、この「プロセス」を視覚的に表したものです。

つまり、品質マニュアルとは、顧客満足を高めるために、それぞれの業務をどのように行ったら良いかが書いてある文書ということになります。

ISO9001に品質マニュアルは必要?

品質マニュアルが必要かどうかを判断するには、ISO規格の要求事項をしっかりと理解しなければなりません。ここでは、2015年の規格改定の経緯から品質マニュアルの必要性について解説します。

2015年版で要求事項からは削除された

実は「品質マニュアル」という記載は、2015年の第5版からなくなっています。まずは、2015年よりも以前の第4版を見てみましょう。

組織は、次の事項を含む品質マニュアルを作成し、維持しなければならない。

a)品質マネジメントシステムの適用範囲。除外がある場合には、除外の詳細、及び除外を正当とする理由

b)品質マネジメントシステムについて確立された”文書化された手順”又はそれらを参照できる情報

c)品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述

引用元:JIS Q 9001:2008|9ページ|4.2.2 品質マニュアル

ご覧の通り、「品質マニュアル」という記載は確認できます。それが、2015年の第5版になると「品質マニュアル」という言葉は見当たらず、以下のような注意書きが追加されています。

JIS Q 9001:2008は,”文書”,”文書化された手順”,”品質マニュアル”,”品質計画書”などの特定の用語を用いていたが,この規格では,”文書化した情報を維持する”という要求事項として規定している。

引用:JIS Q 9001:2015|23ページ|A.6 文書化した情報

ご覧の通り、”文書化した情報”という記載に変更されていることがわかります。

明確な要求はなくなったが、実質的には必要

2015年版では「品質マニュアル」という名称は削除されましたが、規格の4.4.1項で、従来の「品質マニュアル」として要求されていた内容と同等のものが書かれています。

4.4.1 

組織は、この規格の要求事項に従って、必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、品質マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、かつ、継続的に改善しなければならない。 

組織は、品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体にわたる適用を決定しなければならない。また、次の事項を実施しなければならない。 

a) これらのプロセスに必要なインプット、及びこれらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする。 

b) これらのプロセスの順序及び相互作用を明確にする。 

4.4.2 

組織は、必要な程度まで、次の事項を行わなければならない。 

a) プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する。 

引用:JIS Q 9001:2015|5~6ページ|4 組織の状況

また、規格の4.4.2項で、文書化することが求められているので、今まで「品質マニュアル」と呼ばれていたものと同等の文書を用意する必要があるということです。

なぜ要求事項から削除された?

ではなぜ2015年版から「品質マニュアル」という名称が用いられなくなったのでしょうか。その理由の1つとして、品質マニュアルの形骸化に対する是正の意味が込められていると思われます。

まず前提として、品質マネジメントシステムに必要なプロセスとは、厳密には規格要求事項そのものではありません。しかし、多くの組織の品質マニュアルは規格要求事項の”裏返し”で作られています。裏返しとは、規格要求事項の「~しなければならない。」という文言を「~する。」と言い換えただけのものです。

▼規格要求事項

4.1 組織及びその状況の理解 

組織は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にしなければならない。 

組織は、これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し、レビューしなければならない。

引用:JIS Q 9001:2015|5ページ|4 組織の状況

▼規格要求事項を裏返した品質マニュアル

4.1 組織及びその状況の理解 

組織は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にする。

組織は、これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し、レビューする。

上記のような、企画要求事項を”裏返しただけ”の品質マニュアルは、品質マネジメントシステム運用のために実質的に機能しないでしょう。

では、このような”裏返しただけ”の品質マニュアルが普及してしまったのでしょうか?

その原因はおそらく、品質マニュアルを”審査する側”にあると思われます。つまり、審査側が形骸化した品質マニュアルを合格させてしまったことで「この程度の品質マニュアルでも良いんだ」という認識を広げたのです。

仮にもし、実質的な品質マニュアルでないと合格できないような厳格な審査が行われていれば、認証を取得したい事業者は、単なる”裏返し”ではなく、品質マネジメントシステムの構築にほんとうに必要な文書を準備するはずでしょう。

要求事項の改訂によって、確かに”作る側”に対して要求する内容は変化しましたが、結局のところ”審査する”側が変わらないと、現状は大きく改善しないと予想されます。

「 プロセスの運用を支援するための文書化した情報」とは?

明確な「品質マニュアル」という名称が無くなり、「プロセスの運用を支援するための文書化した情報」という曖昧な表現に変わったことで、対応に悩まれた組織も多かったと思います。ここでは、「文書化した情報」について解説します。

結論をお伝えすると、文書化した情報=テキストに限らず動画などのフォーマットでも問題ありません。その理由は、以下の参考資料でも詳しく解説しているので画像をクリックしてご覧ください。


ISO9001の文書管理に動画マニュアルが最適な理由を見る

「文書化した」という日本語訳が生んだ勘違い

まず大前提として、ISO9001の要求事項は英語で書かれたものが原本です。そしてそれを日本規格協会(JSA)などが日本語に訳したJIS Q 9001を我々は読んでいます。

「文書化した」は「documented」の訳ですが、「documented」は文字に起こすことだけを指すわけではありません。

この表現により、「文字がびっしりと書かれたマニュアルが必要」と思い込んでいる組織も少なくありませんが、ISO9001はもっと柔軟な解釈を許容しています。むしろ、運用現場に即して有効に機能する情報の記録方法を選択することが推奨されているのです。

画像ファイルや音声、動画で記録することも十分「documented」と言える

「文書化した情報」とは、言い換えれば、誰が見ても同じ情報が手に入るということです。重要なのは、その情報が実際に活用され、関係者が必要な情報に容易にアクセスできることです。形式にこだわらなくても、目的に合致すれば問題ありません。

例えば、画像ファイルや動画、音声記録を活用することで、視覚的に分かりやすいマニュアルを作成することができます。製造現場では、作業手順や注意点を文字だけで説明するよりも、動画の方が効果的な場合が多くあります。

特に手順が複雑で視覚的な理解が重要な作業では、動画の方が作業者にとって理解しやすく、誤解を防ぐことができます。また、手が離せない作業中でも確認できる情報提供が可能になります。

では何を記録する必要があるのか

ISO9001の規格要求事項に「文書化した情報を保持」あるいは「文書化した情報を維持」と書かれている項目はすべて手順書や記録として残す必要があります。また、会社が決めたもの、顧客から要求されているものも同様に残す必要があります。

文書化した情報(品質マニュアル)の作成方法については、次の章で詳しく見ていきます。ISO9001の要件を満たす文書管理の方法は、以下の記事でより詳しく解説しています。

ISO9001の品質マニュアルの作成方法

「品質マニュアル」という名称を必ずしも付ける必要はありませんが、ここでは便宜上、「品質マニュアル」と表現し、その作成方法について解説します。

規格要求事項にある程度なぞらえる

前述では、「品質マネジメントシステムに必要なプロセスは、規格要求事項そのものではない」と説明しました。

確かにその通りなのですが、工数を出来るだけ削減し、抜け漏れを防ぐためには、やはりある程度は規格の構成に従うのが賢明だと思われます。

具体的な記載内容

それでは一体何を品質マニュアルに記載すれば良いか、要点のみを簡潔に説明していきます。

  1. 適用範囲
  2. 適用規格及び引用規格
  3. 用語及び定義
  4. 組織の状況
  5. リーダーシップ
  6. 計画
  7. 支援
  8. 運用
  9. パフォーマンス評価
  10. 改善

1.適用範囲

品質マネジメントシステムを適用する事業所名と対象とする製品やサービスを記載します。一連のプロセスを考えると全部門、全製品が対象になるのが一般的です。

2.適用規格及び引用規格

現在(2024年11月時点)では、適用規格、引用規格ともに、JIS Q 9001:2015 / ISO 9001:2015 Amd 1:2024となります。※Amd 1:2024は気候変動の追補版対応です。

3.用語及び定義

JIS Q 9001:2015 / ISO 9001:2015 Amd 1:2024で規定している定義を適用することを記載します。

4.組織の状況

品質マニュアルには、下記を意味する内容を記載します。

  1. 会社の外部と内部の課題を明確にする
  2. 利害関係のニーズと期待を明確にする
  3.  内外の課題と利害関係者のニーズ・期待を考慮した上で、適用範囲を決める

上記をどのように実施するかは、品質マニュアルに記載しても別の文書や帳票類で示しても問題ありません。例えば、SWOT分析表で外部と内部の課題を明確にするのも1つの例です。外部と内部の課題のように常に変化があるものは、出来るだけ品質マニュアルとは別の文書に記載した方が、品質マニュアルの改訂が少なく済むというメリットがあります。

以下、品質マニュアルへの簡易的な「記載内容」と、その実現方法として「エビデンス」の2項目に分けて記載します。

5.リーダーシップ

▼記載内容

  1. 品質方針を決める
  2.  組織の役割、責任と権限を明確にする

▼実現方法(エビデンス)

組織の役割は「組織図」などで示します。

6.計画

▼記載内容

  1. リスクと機会を決める
  2. リスクと機会の取組み内容を決める
  3. 品質目標を決める
  4. 品質マネジメントシステムを変更する時は問題が起きないようにする

▼実現方法(エビデンス)

リスクと機会もSWOT分析の「機会」と「脅威」のイメージで考えると分かりやすいです。SWOTクロス分析表を使えば、リスクと機会の取組み内容も決められます。

4の変更に関しては、変更連絡書のようなフォーマットがあれば、規格が求めている記載内容に漏れがなくなります。

7.支援

▼記載内容

  1. 必要な資源(人・モノ)を明確にする
  2. 必要な環境を明確にする(社会的要因・心理的要因・物理的要因)
  3. 監視・測定に必要な機器を適切に管理する
  4. 会社に必要な知識を明確にする
  5. 従業員の力量を明確にし、教育・訓練を行う
  6. 品質方針、品質目標、品質マネジメントシステムを従業員が理解する
  7. 内部と外部のコミュニケーションの方法を決める
  8. 文書化した情報を管理する

▼実現方法(エビデンス)

1では必要な資源を確保するために、設備投資計画書などを作成します。

2は抽象的な部分ですが、ハラスメント防止や個人面談、5S活動などが考えられます。あまり変更する内容ではないので、品質マニュアルに記載する場合もあります。は内容が多くなるため「測定機器管理規定」などの別文書で、会社が行っている管理方法や手順を作る場合があるでしょう。

4も抽象的な内容ですが、知的財産、成功事例、不具合の記録、改善活動の記録といったものも該当します。品質マニュアルの中に記載しておくのも1つの方法です。

5はスキルマップなどで各従業員の力量を示すのが一般的です。また、教育訓練計画書や、教育訓練報告書で記録を残している企業も多くあります。の項目を確認するために、審査では現場で『御社の品質方針は何ですか?』などといった質問がされます。

7は社内のコミュニケーションだけでなく、顧客や協力会社、地域住民といった外部との交流も含まれます。メールなどのやり取りも記録となります。8は内容が多くなるので、「文書管理規定」などの別文書を用意する場合が多いです。

8.運用

▼記載内容

  1. 業務ごとにルールを決める
  2. 顧客からの要求事項を明確にする
  3. 設計・開発の手順を明確にし、管理する
  4. 購買製品を管理する
  5. 製造工程を管理する
  6. 出荷のルールを決める
  7. 不適合品を管理する

▼実現方法(エビデンス)

この章が、企業活動そのものになります。要求事項に対する記載内容が多ければ、「営業管理規定」「設計・開発管理規定」「購買管理規定」「製造管理規定」「品質管理規定」「逸脱管理規定」などの別文書で管理します。

9.パフォーマンス評価

▼記載内容

  1. 監視、測定が必要なものを決め、分析、評価する
  2. 内部監査の手順を決める
  3. マネジメントレビューを行う

▼実現方法(エビデンス)

品質目標の達成度合いも監視、測定、分析、評価に該当します。例えば、品質目標の中に不良率の削減があれば、不良率を計算することは監視、測定に当たりますし、折れ線グラフで推移を作成すれば分析になり、不良率を改善するための施策を考えれば、評価となります。

2は内容が多くなれば「内部監査規定」などを作成する場合もあります。3のマネジメントレビューは必要なインプット項目とアウトプット項目を規格要求事項に沿って品質マニュアルに記載するのが一般的です。

10.改善

▼記載内容

  1. 改善の機会を明確にし、取り組む
  2. 是正処置の手順を決める
  3. 品質マネジメントシステムを継続的に改善する

▼実現方法(エビデンス)

1は4章で考えたリスクと機会なども該当します。2は「逸脱管理規定」などで手順を決め、是正処置報告書などの記録を残すのが一般的です。

3はマネジメントレビューのアウトプットや内部監査、改善提案書などの改善活動も該当します。

このような形で品質マニュアルを作成し、少しずつ実務に合わせた形にブラッシュアップしていきましょう。規格要求事項については、以下の記事でも詳しく解説しているので、本記事と併せてご覧ください。

形骸化しない品質マニュアルを作成するためのポイント

上記の作成方法は簡単ですが、今までと同じ手法で品質マニュアルの形骸化は避けられません。そこで以下のポイントを取り入れることで、自社にとって有効な品質マニュアルへと変えていきます。

品質マニュアルの役割を考える

これまでの話から品質マニュアルの役割は次の2つです。

  1. 従業員に対しての品質への取組みを体系的に説明する資料(教育用)
  2. 活動内容の適切性を確認するための資料(審査・監査用)

特に、1の役割を果たすために、従業員が理解しやすく日常業務で参照しやすいマニュアルにすることがポイントです。そのためには以降の項目を意識することが重要です。

思い切って書き直す

規格要求事項の内容を十分に理解した上で、文言を思い切って書き直すのが効果的です。

例として、下記のような規格要求事項を裏返しただけの品質マニュアルを、実際に活用できる品質マニュアルに変えてみます。

▼形骸化する品質マニュアル

7.3 認識 

組織は、組織の管理下で働く人々が、次の事項に関して認識をもつことを確実にする。

d) 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味

この文章を仮に新入社員が読んだとしても、理解することは難しいでしょう。そこで、次のように思い切って書き直すことで誰が読んでも理解できる内容になります。

▼活用できる品質マニュアル

7.3 全従業員が理解しておくこと 

d) 会社が決めたルールを守らないとトラブルが起こり、顧客クレームが増える恐れがある。

箇条番号をそのまま残しておくことで、審査の時にどの要求事項に対応する文言なのかが分かりやすくなります。

5W1Hで表現する

この作業が最も重要なものとなります。5W1Hとは、それぞれ以下の通りです。

  • Why:なぜ行うのか
  • What:何を行うのか
  • Who:誰が行うのか
  • When:いつ行うのか
  • Where:どこで行うのか
  • How:どのように行うのか

これらを意識して品質マニュアルを作りこむことで、形式的なものから実行可能なマニュアルへと変化します。例えば、「4.1組織及びその状況の理解」を5W1Hを使って表現してみます。

▼形骸化する品質マニュアル

4.1 組織及びその状況の理解 

組織は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にする。

組織は、これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し、レビューする。

▼活用できる品質マニュアル

4.1 会社の現状を把握する(Why)

年度末に(When)経営者は(Who)SWOT分析を行う(What)。

SWOT分析の結果は、毎月の経営会議で(Where)進捗確認し、必要があれば随時変更していく。

両者ともに規格要求事項は満たしていますが、全く違った文章になっていることが分かると思います。

難しい言葉はなるべく使用しない

ISOの規格要求事項は英文からの翻訳なので、普段聞きなれない言葉が多く使われています。例えば、「トップマネジメント」、「レビュー」、「コミットメント」といった言葉は、「社長」、「検証・確認」、「約束」などといった言葉に置き換えた方が理解しやすくなります。

写真や図を要所要所で入れる

文章だけでなく、品質マネジメントシステム体系図や組織図、責任と権限をマトリックス図などで表すことで、視覚的に分かりやすいものにします。

「動画」を活用する

「文書化した情報」は紙である必要はありません。誰が見ても同じ情報が手に入れば良いのです。もちろん動画マニュアルはこの要件を満たしています。

ISO9001の要求事項を満たしつつ、現場でより効率的で実用的な情報共有を可能にする方法として、動画の活用は注目されています。動画を通じて視覚に訴えることで、作業者の理解度が深まり、実践的な教育効果が得られるだけでなく、情報の正確な伝達が可能になります。

次章からは、品質マニュアルに動画を活用するメリットや効果、動画マニュアルの作成で製造現場の導入事例が多いツールをご紹介します。

マニュアル作成に動画を活用するメリット

従来、マニュアルは紙ベースで作成するという概念しかありませんでした。

しかし、現代の技術進歩により視覚的に分かりやすい動画を活用することができるようになりました。マニュアルの運用効果を最大化するために、動画を活用することは大きなメリットを生みます。主なメリットを3つご紹介していきましょう。

メリット1:わかりやすくて実質的に機能する

ISO9001の要求事項の中には「教育(教育訓練)」があります

形だけの品質マニュアルに、教育をして力量をつけると記載しても何の意味もありません。動画マニュアルは、視覚的な情報伝達が可能なため、文章のみのマニュアルに比べて理解度が大幅に向上します。これにより、教育の効果が高まることは間違いありません。

メリット2:作業手順にバラつきが生じにくく、品質向上が期待できる

動画マニュアルを活用することで、すべての作業者が同じ情報に基づいて作業できるため、業務のバラつきが生じにくくなります。

手順や標準作業を統一した形で視覚的に伝えることで、ヒューマンエラーを防ぎ、プロセスの一貫性を実現します。これが製品やサービスの品質向上に直結し、ISO9001が求める効果的な運用を促進します。

メリット3:保管や管理が簡単

ISO9001では文書化された情報の管理も重要な要件です。

動画マニュアルはデジタル化されているため、クラウド上に簡単に保管・管理でき、最新情報へのアクセスもスムーズです。更新作業も簡単に行えるため、常に最新の手順や規定が作業者に伝わります。紙の資料とは異なり、劣化や紛失のリスクもなく、文書管理の効率化が図れます。

このように、品質マニュアルの動画化はISO9001に基づいた品質管理を行う手段として効果的です。動画マニュアルの運用だけに限らず、本記事で取り上げていた「スキルマップ」の活用も同時に行えるツールとして、tebiki現場教育があります。

次章からはtebiki現場教育の機能概要と実際の活用事例をご紹介します。

「動画マニュアルtebiki」なら品質マニュアルを効率的に作成可能!

tebiki現場教育は、製造業を中心とした現場産業で動画マニュアルの作成や管理をかんたんに行えるツールとして導入されています。

▼「tebiki現場教育」紹介動画▼

2024年には新たに「スキルマップ機能」を実装し、ISO9001に基づいた力量管理を行えるようになりました。ここからは、主な機能をや特徴をピックアップしてご紹介します。

誰でも簡単に操作できるシンプルな設計

tebikiは、とにかく「操作のかんたんさ」にこだわって作られたツールです。マニュアル作成にほんとうに必要な機能だけを残し、不要な機能はそぎ落とした設計になっています。

tebikiの編集画面イメージ


操作画面はシンプルで使いやすく、編集スキルがない方やパソコン操作に不慣れな方でも直感的に動画マニュアルが作成できます。

実際にtebikiを活用することによって、1本の動画マニュアルを作るのに1時間かかっていたのが、たったの15分ほどに短縮された事例もあります。また、操作が簡単だからこそtebikiを活用できる人が増え、動画マニュアルの作成スピードが加速度的にアップします。

テスト機能で学習の理解度を測る事が可能

tebikiには従業員の理解度をチェックするための「テスト機能」が搭載されています。

動画視聴後や研修後にテストを実施することで、従業員一人ひとりがどの程度業務を理解しているかを把握したうえで、教育内容や頻度を調整することが可能です。

また、テストの自動採点機能もついているため、教育担当者は手間をかけずに従業員の理解度を確認できます。

▼tebikiで作成したオリジナルテスト(株式会社大商金山牧場 の導入事例より)▼

テスト機能(大商金山牧場)

100ヶ国語以上への自動翻訳に対応

tebikiの動画マニュアルは、100ヶ国語以上の言語に自動翻訳できる機能が付いています。

外国人労働者が使うためのマニュアルをわざわざ翻訳して作る必要がなくなります。さらに、英語やベトナム語などの計15言語で字幕を読み上げられるため、母国語で説明を聞きながら理解を深めてもらうことが可能です。

tebikiなら100ヶ国語以上に対応した自動翻訳機能が搭載されていることが分かる編集画面

気になる「精度」ですが、日本語の日常会話程度であれば、問題なく伝わるレベルです。もし自動翻訳で伝わらないということであれば、後から字幕を修正することも可能です。

tebikiの翻訳機能を活用したことで、従来発生していたマニュアルの翻訳工数がゼロになった事例や、外国人スタッフの理解度テスト正答率が100%になった事例など、外国人の情報共有/教育の改善につながった事例があります。

スキルマップと動画マニュアルが連動した現場教育の実現が可能

tebikiには動画マニュアルに加え、スキルマップ機能が搭載されています。tebiki上でスキルマップを活用することで、教育計画とカリキュラムを一元管理し、スキルの習得状況をリアルタイムで把握することが可能です

スキルマップをExcelで管理している場合、現場教育のアクションがスキルマップに紐づかず、バラバラに運用されることが多いという課題があります。しかし、tebikiではスキルマップと動画マニュアルがシームレスに連携します。

たとえば、あるスキルが不足していると判明した場合、そのスキルに対応する動画マニュアルをすぐに視聴できるように設定することで、教育と評価が一体化します。またISO資格の取得を目的とした年1回の更新だけでなく、日常的にスキルマップを活用することで、スキルの習得状況や教育の効果を継続的に監視・改善できます。

このように、tebikiには品質マニュアルの形骸化を防ぎ、ISO9001に基づいた品質管理を徹底できる機能があります。今回ご紹介している機能はあくまでも一部です。他の機能やサポート体制、プランなどの詳細は以下の画像をクリックして概要資料をご覧ください。


動画マニュアルがかんたんに作れる「tebiki」の概要を見る

tebikiの活用によってマニュアル作成が効率化された事例

ここからは実際にtebikiをマニュアル作成に活用して、マニュアル作成が効率化された事例を3社ご紹介します。

『製造現場の導入事例を他にも知りたい』という方は、製造業の導入事例だけを集めた導入事例集を以下のリンクをクリックしてご覧ください。

手順書、マニュアル作成の工数は紙の1/3に:児玉化学工業株式会社

児玉化学工業は、1946年に創業した化学メーカーです。児玉化学工業は主に住宅設備・自動車向け合成樹脂加工や産業機器の製造を手掛けています。

児玉化学工業では、外国人従業員の教育や活用しきれていない紙の手順書、不明確な社内ルール「暗黙の了解」などの課題に直面していました。製造現場には部品を作るための要領書が膨大に存在し、外国人従業員の中には日本語が理解できないこともありました。そのため、紙のマニュアルだけでは作業手順や安全指導が十分に伝わらず、製品不良の原因となっていました。

そこで児玉化学工業は動画マニュアルtebikiを導入しました。

tebiki導入後、児玉化学工業では実際に手順書作成の工数は紙の1/3に短縮され、外国語への翻訳も容易になりました。さらにtebikiの導入により、従業員間の「暗黙の了解」や「慣例」に頼ることなく、明確なルールや手順を共有することが可能になることで、製品の品質向上だけでなく、OJTの効率化や業務の標準化、作業不順守が9割減少したという結果が出ています。

▼動画マニュアルtebiki活用事例動画:児玉化学工業株式会社▼

児玉化学工業株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。

手順書作成工数が、3分の1まで減少:アサヒ飲料株式会社

アサヒグループに所属する飲料の製造販売会社「アサヒ飲料株式会社」では、教育担当者の教え方にバラツキがあり、習熟者の力量が安定しないという問題を抱えていました。また、手順書の作成に多大な労力がかかるため、作成が後回しになっていることも社員の力量低下に影響を与えていました。

そこで、教育内容の統一と手順書作成の効率化を図るためにtebikiを導入し、新人教育や業務手順の動画マニュアルを作成。これにより、従業員全員が同じ質の教育を受けられるようになり、従業員の力量が安定するように。作成に3〜10時間かかっていた手順書が、tebikiを使うことで1本あたり30分程度まで短縮することにも成功しました。

アサヒ飲料株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。

動画マニュアル作成時間が75%削減:タマムラデリカ株式会社

大手コンビニエンスストア向けの専用工場として、食品の開発製造を手掛けているタマムラデリカ株式会社。

同社では、紙マニュアルでは細かい動きが伝わらず、OJTでは教育の質に差が生じるという課題がありました。そこで、tebikiを活用して、新人や外国籍の社員に向けた動画マニュアルを作成。

その結果、細かい動きやニュアンスが正確に伝わるようになり、従業員の理解度が向上しました。また、自動翻訳機能を活用することでマニュアルの多言語化が容易になり、マニュアル作成時間を1時間から15分に短縮することに成功しました。

▼動画マニュアルtebiki活用事例動画:タマムラデリカ株式会社▼

タマムラデリカ株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらのインタビュー記事をご覧ください。

「デジタル現場帳票tebiki現場分析」でISO9001の取得をさらに効率化

ここまで動画マニュアルtebikiについてご紹介してきましたが、私たちが展開するツールはもう1つあります。それが「かんたんデジタル現場帳票tebiki現場分析」です。

tebiki現場分析は、製造日報などの現場帳票で集める日々の記録をデジタルで記録・管理・分析できるツールです。PCはもちろん、スマホやタブレットで操作しやすいように設計されているのが大きな特徴です。

動画マニュアルの他にも、デジタル現場管理tebikiを使えばISO9001の運用をさらに効率化することができます。

現場帳票tebikiのイメージ画像 PC/タブレット版

日々の記録をデジタルで行える

例えば、設備の日常点検記録などは、膨大な紙の量を必要とします。量が多くなればなるほど、記録を遡るのは大変です。さらに、数値などが記載してある場合、後から読み返した際に判別できないということも多々あります。

デジタル管理をすることで、欲しい情報がすぐに閲覧することができ、読みにくいという問題もクリアすることができます。ISO審査の現場でも、大量の書類から指定された日の点検記録を探すのに多くの時間を取るということも無くなります。

tebiki現場分析ではスマートフォンやタブレットでも簡単に記録/操作できることが分かる図

申請~承認のフローもデジタルで可能

承認がデジタルでできることで、1枚1枚ハンコを押す手間がなくなります。また、一括承認機能を使えば、大量に来ている申請を一括で承認できます。

tebikiなら申請~承認のフローもデジタルで一括可能なことが分かる図

さらに、申請〜承認までのフローをデジタル管理することで、ルールと違う承認者が押印している、あるいは承認印が押されていない、といった審査の現場で指摘されやすい間違いも防ぐことができます。

溜まった記録データは分析に活かせる

ISO9001の認証を取得するだけなら、記録を残すだけで良いですが、ISO9001を取得する目的の1つである「品質の向上」を実現するには、それらの記録を活用した分析による改善が必要です。実際、最近の審査では「集めたデータ(記録)をどのように活用していますか?」という質問が増えています。

まさにtebiki現場分析では、現場帳票に記録された情報を基にダッシュボード機能を使用することで、管理図などの形でリアルタイムで可視化されるため、分析が即座に行えることが特徴です。

tebiki 作業時温度管理における折れ線グラフの例

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まとめ

ISO9001の品質マニュアルは、組織の品質マネジメントシステムを効果的に運用するための重要なツールです。2015年版からその名称は要求事項からは削除されましたが、実質的には組織の運用を支える文書として今も役立っています。その作成にあたっては、現場で理解しやすく、実際のプロセスに沿った具体的な内容を目指す必要があります。

ポイントは、規格要求事項の理解を深め、5W1Hで品質マニュアルに落とし込むことです。さらに、専門用語を避けてシンプルな表現を使い、視覚的な要素を活用することで実用性を高めることが求められます。

また、動画を活用することで、マニュアルの利便性と教育効果を一層高めることが可能です。仮にISO9001の認証を目的としていない方にも、動画マニュアルの活用はおすすめで、マニュアル作成の工数削減に大きな効果を発揮してくれます。

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ISO9001の認証を取得するためには、品質マニュアル以外にも日々の品質記録を残す必要がありますが、デジタルで行うとラクです。そこでおすすめなのが、もう1つのtebiki「デジタル現場帳票tebiki」。記録だけでなく、分析まで行えるので、品質改善に高い効果を発揮してくれます。

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