動画活用で日本基準の作業品質を
ベトナム工場で実現
FUKOKU VIET NAM CO., LTD.
- 業種 :製造
- 従業員数 :1,001-3,000名
- テーマ :外国人教育
お話を伺った方:フコクベトナム 第三工場 工場長 海野 雄一郎様
フコクベトナム 第一工場 Trainingリーダー Ngo Van Cuong様
フコクベトナム 第一工場 検査Supervisor Nguyen Thi Hai様
フコクベトナム 第一工場 加硫工程リーダー Nguyen Thi Hang様
フコクベトナム 第三工場 検査リーダー Nguyen Thi Lan Anh様
フコクベトナム 第三工場 検査Senior Supervisor Pham Thi Thao様
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課題
- 紙の作業要領書とOJT中心の教育で、教え方や習熟度にばらつきが生じていた
- 文章では伝えにくい暗黙知の共有が難しかった
- 言語や文化の違いにより、日本と同じ品質基準を浸透させることが難しかった
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効果
- 作業要領書の作成工数を56%削減(270分→120分)
- 教育工数を63%削減(160分→100分)
- 動画で作業手順や判断基準を共有することで、教育のばらつき抑制と理解度向上を実現
ベトナム工場でtebiki現場教育を活用
貴社の主な事業内容について具体的にお聞かせください
海野様:当社は、ゴム・樹脂を中心とした工業製品を製造・販売するメーカーです。自動車関連部品を主力に、産業機械やインフラ分野向けの製品も手がけ、グローバルに供給しています。材料技術を活かした設計・開発から製造までを一貫して行い、品質と安定供給を重視したものづくりを強みとしています。
海外では、ASEANを中心にタイ、インドネシア、インド、ベトナムに生産拠点を展開しています。日本をマザー工場と位置づける一方、ASEANは量産と事業拡大を担う重要なエリアです。中でもベトナム工場は、将来的な成長も見据えた主要拠点の一つとなっています。私が所属するベトナム工場では、ブレーキ関連部品や機能品部品を製造しており、日本向けを中心に一部はベトナム国内にも供給しています。
このベトナム工場の製造・検査工程で、tebikiを導入しています。外観検査、加硫作業、仕上げ作業といった工程を中心に、作業内容を動画マニュアル化し、教育や作業標準のばらつきを抑える目的で活用しています。海外工場における人材育成と品質維持の両立を図る取り組みとして、現場で定着し始めています。
ベトナム工場で顕在化した「紙とOJT教育」の限界
tebiki導入前の課題と導入経緯について教えてください
Nguyen Thi Hang様:新人作業者の教育は、これまで紙の作業要領書とOJTを中心に行ってきました。しかし作業の理解や習熟度にばらつきが出やすく、教える人によって伝え方や重点が異なることで、作業方法が揃いにくい状況がありました。こうした問題は、日々の工程巡回を通じて明確になっていきました。同じ作業でも姿勢や確認の順番、判断の仕方が作業者ごとに異なり、一日単位では安定しているように見えても、シフトごとにNG率の傾向が異なるなど、工程内にばらつきを抱えた不安定な状態でした。
Nguyen Thi Hai様:検査工程では、課題がより顕著でした。「照明の下で製品を正しい角度で回す」といった動きや判断のタイミングは、文章だけでは正確に伝えることが困難です。教育担当者は「よく見て」と指示するしかなく、その言葉に込められた感覚や暗黙知を伝承することには限界がありました。また「軽微なキズ」「小さなバリ」といった定性的な判定基準は経験の差によって解釈が異なり、不良品の流出や良品の誤判定につながる問題も生じていました。
海野様:加えてベトナム工場では、言語・文化的な背景が教育の難しさをさらに複雑にしていました。表面状態を表すベトナム語の「sần sùi(ざらざら)」のような表現は日本語に直訳しても意図が正確に伝わらず、言葉の壁が生じていました。さらに作業に対する「重点の置き方」の違いも大きな壁でした。日本では「なぜそうするのか」を重視する文化がありますが、ベトナムの現場では「どうやるか」「どうすれば早くできるか」への関心が強い傾向があります。そのため、左手で持つと規定された作業を右手で行うなど、作業者が独自に手順を変えるケースもありました。悪意からではなく効率を高めようとする自然な行動ですが、品質のばらつきや不良品発生につながるリスクがあります。
こうした背景から、作業のやり方や判断基準を言葉で説明するのではなく、そのまま伝えられる仕組みが必要だと考えるようになりました。誰が教えても、誰が作業しても、同じやり方が伝わることが、品質と生産性を安定させるために不可欠だと感じていました。tebiki導入の検討のきっかけとなったのが、日本フコクでの導入実績です。ベトナム工場側で動画マニュアルを作成・更新するための時間や体制を確保できる見通しが立ったことで現場主体で継続的に運用できると判断し、ベトナム工場でもtebikiを活用した現場教育に取り組むことを決めました。
作業要領書の作成工数56%削減、教育工数63%削減
tebiki導入後の効果について教えてください
海野様:tebiki導入の効果を定量的に把握するため、現場作業者および教育担当者を対象に作業要領書の作成工数と教育工数のアンケートを実施しました。作業要領書については「撮影」「編集」「文章作成」「印刷・承認」といった作成工程を分解し、どの作業にどれだけ時間がかかっているのかを整理しました。また教育についても、「事前学習」「実作業の付き添い指導」「確認・フォロー」といった教育の工程ごとに、導入前後での工数を比較しています。このように工程ごとに、tebiki導入前後の変化を確認した結果、作業要領書の作成工数と教育工数の両面で、明確な削減効果が見えてきました。
① 作業要領書の作成工数削減
Pham Thi Thao様:tebiki導入後、作業要領書の作成時間は270分から120分へと約56%削減されました。当初は動画マニュアルは編集が大変で、かえって時間がかかるのでは?という疑問もありました。実際に、ファイル更新・字幕追加などの編集工程にかかる時間は、導入前の20分から50分へと増加しています。一方で、最も大きな削減効果が見られたのが「操作説明の記入」工程でした。たとえば、「製品を照明に対して45度の角度で保持しながら、一定速度で回転させる」といった動作を文章で正確に表現しようとすると、「一定速度」とはどの程度か、どのように書けば誤解なく伝わるかといった言葉の検討や、関係者間での認識合わせに多くの時間を要します。動画であれば、動作そのものを撮影して共有できるため、細かな表現をテキストで補足するための言語化スキルは必要ありません。正しいやり方をそのまま記録すればよく、伝え方を文章で悩む必要がないため、この工程は180分から30分へと大幅に短縮されました。さらにtebikiの自動字幕・自動翻訳機能により、ベトナム語対応もアップロード後にほぼ自動で完結します。編集工数が増える懸念を機能面でカバーしながら、文章作成の工数削減と合わせて、全体で約56%の削減を実現しています。
② 教育工数の削減
Pham Thi Thao様:教育工数の削減については、tebiki導入によって教育の工程そのものを見直したことが大きな要因です。導入前は、新人作業者が紙の作業要領書を読んだ後、リーダーやベテラン作業者が1対1で付き添い、実作業を見せながら口頭で指導・修正を行う形が中心でした。このため、教育担当者が長時間拘束される工程になっていました。
導入後は、新人作業者が事前にtebikiの動画で作業の流れやポイントを理解したうえで現場に入る運用に変更しています。最も熟練した作業者の動きや視線、作業リズムを動画で確認できるため、現場ではチェックリストによる確認と補足指導のみで教育が完結するようになりました。このプロセス変更により、1人あたり/160分かかっていた教育時間は60分まで短縮され、約63%の削減を実現しています。
Nguyen Thi Lan Anh様:以前は、新人が入るたびに半日近く横について指導する必要がありましたが、今では動画を数回見てもらったうえで、「まずはこの通りにやってみてください」と伝える形で進められるようになりました。その結果、教育にかける時間を抑えながら、生産対応や異常処置など、本来注力すべき業務に時間を使えるようになったと実感しています。また、新人作業者からも、「紙の作業要領書は文字が多く、専門用語も難しいため不安があったが、動画だと作業方法が具体的に分かり、分からない部分だけを何度も見返せるので助かる」といった声が上がっています。教育する側・される側の双方にとって、負担の軽減と理解度の向上につながっていると感じています。
海野様:こうした作業要領書の作成工数や教育工数の削減は、単なる効率化にとどまらず、現場の品質と生産性の安定にもつながっています。外観検査や加工工程では、差し込み位置や作業の向き、力のかけ方、視線、製品の回転スピードなど、文章では伝えにくいポイントが多くあります。そうした作業の勘どころを動画で具体的に共有できるようになったことで、作業者ごとのやり方のばらつきを抑えられるようになりました。tebikiは、品質をそろえながら生産性を維持・向上していくための基盤として役立っていると感じています。
教育を超えて、現場改善の共通基盤へ
海野様:今後は、tebikiを現場教育にとどまらず、作業のばらつきやムダを減らすための共通基盤として活用していく方針です。工程監査や改善活動の中で見えてきた課題に対し、「なぜ人によって結果が変わるのか」を動画で可視化し、感覚や経験に依存していた部分を少しずつ標準化していきたいと考えています。その中でも注力したいテーマの一つが、生産性のばらつきです。例えば、生技部門での治具の取り付けや機械調整のやり方は人によって異なり、早い人は15分で完了する一方、遅い人では30分かかるケースもあります。こうした差を個人の熟練度に任せるのではなく、工具準備の外段取りから、最短で完了する治具取付・調整手順までをまとめた品番切替の標準作業をまとめたtebiki動画を作成し、誰が作業しても同じ時間・同じ品質で完了できる状態を目指しています。
また、改善活動の展開スピードも今後の重要なテーマです。新しい改善(Kaizen)を現場へ展開する際、これまでは全シフトに対して説明や再教育を行う必要があり、内容が伝わるまでに時間を要していました。今後は、改善内容を動画として配信する「Tebiki Kaizen News」の活用を検討し、関係部門が必要なタイミングで内容を確認できる仕組みを整えていきます。これにより、「情報待ち」によるムダを減らし、改善をよりスピーディーに現場へ浸透させていきたいと考えています。このように、tebikiを使って「正しいやり方」を見える形で共有することで、教育・監査・改善を一本につなぎ、品質の安定と生産性向上を継続的に実現していきたいと考えています。